最高裁判所第二小法廷 昭和42年(オ)1017号 判決 1970年5月22日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人用松哲夫の上告理由第一点について。
本件記録によれば、控訴人(上告人、以下同様とする。)に対する原審第一回口頭弁論期日(昭和四二年六月五日午前一〇時)の呼出状が、控訴人不在のため、事理を弁識するに足る知能を有する控訴人の雇人松宮三代子に交付されたことは、明らかである。されば、右交付によつて控訴人に対する右呼出状の送達の効力を生じ、右雇人が上告人に対し、右呼出状を手交したか否か、または右呼出状の交付があつたことを通知したか否かは、右送達の効力に影響を及ぼすものではない。右と異なる見解に立つ所論は理由がない。
また、当事者の一方が適法な呼出を受けながら口頭弁論期日に出頭しない場合において、裁判所が、右当事者の一方の不出頭のまま口頭弁論を経て審理を終結し、判決言渡期日を指定して告知したときは、その告知は、民訴法二〇七条において準用する同法一九〇条二項により、右期日に在廷していなかつた当事者に対しても、その効力を有するから、さらにその者に対し右判決言渡期日の呼出状を送達することを要しないものと解すべきである。けだし、口頭弁論期日に不出頭の当事者は、自ら右期日に出頭して民訴法一五四条但書による判決言渡期日の告知を受ける機会を放棄したものであるのみならず、判決言渡期日においては右当事者のなすべき訴訟行為はなく、したがつて、右言渡期日の呼出状の不送達によつて、右当事者は特段の不利益を蒙るものではないからである。これを本件についてみるに、前段説示のように原審第一回弁論期日の呼出状は控訴人に適法に送達されたところ、本件記録によれば、控訴人が右期日に出頭しなかつたので、原審が、右期日に弁論を終結し、判決言渡期日を昭和四二年六月二六日午前一〇時と指定して告知したことは、明らかである。されば、原審が控訴人に対しさらに右判決言渡期日の呼出状を送達しないで、右期日に判決を言い渡したことは、何らの違法もない。右と異なる見解を採る所論は理由がない。
また、前段の説示の違憲をいう所論は、ひつきよう、前段の法令の解釈の違法を主張するにすぎないところ、その理由のないことは、すでに述べたとおりであるから、右所論は前提を欠く。
されば、論旨は、すべて採用に値しない。
同第二点について。
論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および事実認定を非難するものであり、所論の違法はないから、採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一)